第4話 Roy Ayers

8月25日、6日間の久々のニューヨークBLUE NOTE出演の初日。
ロイエアーズの音楽を聴くのは2年ぶりである。
母親と共に訪れたライオネル・ハンプトンのコンサートで、2本のマレットをプレゼントされたことがきっかけで
プロの道に進んだらしい。

20年ほど前から若いアシッド・ジャズ、ヒップホップの連中がロイの音楽をサンプルし,いまだに多くの彼の音楽の支持者がいるが、"いくらサンプリングされても俺に入ってくる印税は一回50セントだけ”と満席の会場を笑わせていた。

いわゆる一般のジャズとは一線を画す音楽のジャンルだが、アメリカのブラックミュージックの歴史もロイエアーズの音楽抜きには語れない。

60年代でデビュー、70年代にかなり人気者となり、いくつかのヒット曲を持っているが、
なかでも"Everybody loves the Sunshine"などの大ヒット曲では会場の客もバンドと一緒になって大合唱となり
盛り上がりも頂点に達した。
この曲"Everybody loves the Sunshine"を書いたきっかけが今回の彼のMC で初めてわかった。

彼は1940年カリフォルニア、ロサンゼルス生まれ。彼が14歳のとき、空がそれまでの綺麗な空でなく、
車の廃棄ガスに覆われて汚れていることに気づき、それを悲しく思い、それがこの"Everybody loves the Sunshine"を書くきっかけとなったと説明していた。

思い出せば私が1975年、始めてロサンゼルスに半年滞在していたときも、空が車の排気ガスで汚染されていたが、
当時はそれほど気にならなかった。
だがその2年後の77年に、今のニューヨーク永住が始まる前、一ヶ月ほどロサンゼルスを再び訪れた。
山脈からの風向きとその地形のせいか、午前中のロサンゼルスは昔からいわゆるどんよりした空が通常らしいが、
このたった2年後の77年に見た午前中のロスの空の色はすでに排気ガス公害で地上近くは濃い茶色、
それが次第に上方に向かって濃いグレーから薄いグレーと見事に4ー5段階ほど色が変化しているので驚いたことが
あったが、ロイが14歳の時、つまり1954年にすでに車社会米国では、車の排気ガスによる公害が発生していたことを知り再び驚いた。

ロイのグループは聞くたびに新しいアレンジがなされており、16ビートの見事な鋭いリズミックなしかけなど、
客を飽きさせない見事なアレンジがいつもなされている。
あまりにすばらしいセットのためそのままセカンドセットもロイの音楽に浸りきった。

もちろん満席である。
がこのロイですら大手レコード会社に属することは出来ず、自費でCDを出しているのである。
薄い紙のCDのケース。ライナーノーツも無しのCDを$20で売っていたので購入。 

これは今年デトロイトのARTUROでのライブを収録したもので、このBLUE NOTEでの演目とほぼ同じ内容である。

もし入手可能であれば是非聴いて欲しい1枚である。

不思議と彼の音楽とその主張は今聴いてもすこしも古さを感じさせないどころか、逆にとても洗練されていて
非常にモダンで、今のこの現代社会にも何故かぴったりフィットするのである。

ROY AYERS LIVE AT ARTURO's / DETROIT

Roy Ayers: Vibes/Vocal
Mark Adams: Keyboards
Ray Gaskin: Alto Sax
John Pressley: Vocal
Donald Nicks: Bass
Lee Pearson: Drums
Vibration: Percussion
Racey Biggs: Trumpet




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