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ハイブリッドジャズの歴史 -クリヤ・マコト-


第29回:ロンドンのメシは本当に美味い!

  2010年の3月28日、メンバーやベンスたちとの待ち合わせは「Pizza Express Jazz Club」1階のレストランだった。

到着するとまだ誰もいなかったので、ぼくはコーヒーを一杯注文した(写真上)。これがめちゃめちゃ美味かった。しかしこれは、続く二日間に渡るロンドン・グルメ旅の、ほんの幕開けに過ぎなかったのだ。ジャジャーン。

 「回顧録」調にスタートしてみたが、この劇的なロンドン食生活の変化には確かな理由があった。ここ数年間イギリス政府が、外食産業の質の向上を政策として取り組んで来たそうなんだ。テレビで料理番組を増やしたり、美味しいシェフをスターに仕立てて意識の向上を促したり。ロンドンの食事があまりにも評判が悪いから、観光資源の一環としてその改善に取り組んだらしいんだ。やればできるってことだね。英国人全体の味覚がどうかしてるんじゃないかと思っていたけど、どうやらそういう事ではなかったらしい。ともかく旅行者にとっては、ロンドンは一転天国となった。


Pizza Expressの美味しいカプチーノ

  ファンシーなイタリアン・レストラン・チェーン店の「Pizza Express」は、ある意味この政策の象徴とも言える店なんじゃないかな。経営者はイタリア人に違いない、と勝手に思っているんだけど、ピザはもちろん前菜(写真中)からパスタ、メインディッシュに至るまで本当に美味しい。それで良い音楽(ジャズ)を提供しているんだから最高だね。もっとも音楽に関しては、ロンドンは昔から世界に冠たる音楽の都の一つだけれど。


Pizza Expressの美味しいオードブル

  ウクライナから来た当日のメイン・アーティストEnver Izmaylov氏(はい、読めません)は、本当に心の広い男でぼくらにリハーサルの時間まで作ってくれた。オーディエンスはビックリしたと思うよ。ウクライナ航空の公演で、ウクライナの日だとばっかり思ってたら、いきなり日本人が出てきて演奏したんだからね。でも彼らにとっては、この思わぬ飛び入りの前座は「ラッキー」だったみたいで、図らずも二つのエキゾチックな音楽を一度に聴くことができたと喜んでくれた。

   ぼくは個人的に、ロンドンのジャズクラブのオーディエンスには何か特別のものを感じた。「熱心」という意味ではどこのオーティエンスもそれなりに熱心だし、もちろん日本の音楽好きの人たちもすごく熱心だけど、ロンドン・オーディエンスは長い劇場文化を背景に、文化が極めて身近で日常的な雰囲気がある。彼らは音楽への感受性が極めて強く、異文化に寛容なオープンな雰囲気に充ち満ちていた。なるほど彼らのようなオーディエンスこそが、世界に冠たる音楽都市ロンドンを創り出しているんだなあ、と実感した。

   聴きに来たのはまさに老若男女、子連れで来ている夫婦や、老夫婦などカップルも多い。どう見ても「こうして美味しい食事をしながら音楽を聴きに来るのが日常、これがないとつまらなくて生きていけない!」という雰囲気の人ばかりだ。音楽はまさに、こういう人生のエッセンス。ジャズという音楽自体、こういう人たちの日常の中で育まれてきたものだと思う。ぼくは40分くらいの短いステージをやったが、それでも3枚だけ持参していたCDがすぐに売り切れてしまった。

   その後休憩を挟んで、メインのEnver Izmaylov氏率いるウクライナ・バンドのステージとなった。これがまた面白かった!彼らはほとんど英語が話せず、手振り身振りのコミュニケーションしかとれなかったけれど、みんな素朴な良い人たちだった。(写真を見るとわかる通り、ウクライナ人はイケメン揃い。) Izmaylov氏はギタリストで、スタンリー・ジョーダンのような両手で伴奏とソロを一緒にやってしまう大道芸的なスタイルの名手だった。多分こっちの方がオリジナルで、スタンリーはそれを独学でまねたんじゃないのかなあ?


ウクライナのアーティストたちと、もちろんベテランの おじさんがメインアーティスト

ジャズのスタンダードやビートルズの曲などもやったけれど、最も面白かったのはウクライナのフォークロア。変拍子でハイテンポの民謡を、超絶テクニックでたたみ込むようにプレイ。さらにはギターによる音声模写までやって笑いをとる、昔のブルースメンのようなスゴイおじさんだった。水道事故が無かったらこれを聴くこともなかったかも、と思うと不思議な縁を感じた。ベンスも友人たちを紹介してくれ、美味しいパスタも相まって本当に楽しい一夜だった。

  さて、ニューアルバムが完成しました!このためにぼくおよび周辺スタッフには、2011年はまさに正月が亡かった(涙)。しかし入魂のできばえにはやはり感無量。3月にリリース予定なので、詳しくはまた追ってお知らせします。早速ミニツアーもあるので遊びに来てね!


<クリヤ・マコト・ライブ情報>
●クリヤ×魚谷・デュオ+北村嘉一郎
  2月12日(土) 大阪ミスターケリーズ(06-6342-5821)
  出演: クリヤ・マコト(key)、魚谷のぶまさ介(b)、ゲスト=北村嘉一郎(voice perc.)
  ※日本で唯一、世界でも珍しいジャズ・ボイス・パーカッショニスト北村嘉一郎を迎えます!
●アルバムデビュー20周年記念ツアー第一弾
  3月18日(金) 神戸クレオール(078 251-4332)
  3月19日(土) 岡山県真庭市勝山文化センター(0867-44-2011)
  3月20日(日) 広島スピークロー(082-545-3960)
  出演: クリヤ・マコト(pf)、納浩一(b)、大坂昌彦(ds) 3/19ゲスト=中西圭三(vo)


※詳しくは、クリヤ・マコト・オフィシャルサイトをご覧ください。
クリヤ・マコト・オフィシャルサイト
http://members.jcom.home.ne.jp/tothemax/live/schedule.html


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