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ハイブリッドジャズの歴史 -クリヤ・マコト-


第21回:ブダペストのクリヤ・マコト−1

前回に続いて、2010年のエジプト〜ヨーロッパ・ツアーについてご報告したい。エジプトではTOKYO FREEDOM SOULでぶちかまし、その後も同じメンバーでツアーしたかったのだけれど、エジプト公演が決まった頃にはその後のメンバーのスケジュールが埋まってしまっていて断念。この先ぼく一人だけで旅をすることになった。
ハンガリーのブダペストではマスタークラスのセミナーを2件。リスト音楽院などで地元の優秀な学生を前に、日本の伝統音楽や音楽ビジネスについて講義した。マジでね、ハンガリーは音楽家のレベルがハンパじゃ無く高い。現地のスタッフにいろんな音楽を聴かせてもらったけれど、フォークロア音楽がとても盛んで、若者がポップスやジャズに取り入れて新しいハイブリッド音楽を創り出している。演奏はどの楽器も本当にレベルが高い。そもそもリスト、コダーイといった名作曲家を輩出している歴史があり、クラシック音楽の伝統と教育レベルの高さで知られている。日本からもクラシックを勉強しに来ている学生は大勢いるという。

ブダペストのジャズ・クラブ「TAKE 5」の店頭にて
ドアにピーターのトリオのフライヤーが貼ってある

  そんな中、ジャズをやりに来ている日本人は誰もいないんだよね、という声が学生から上がった。ジャズをやりたい日本人はみんなアメリカに行っちゃうからね、とぼくは答えたんだけど、そういう自分もアメリカでプロのジャズメンになった本人だし(笑)。しかし近年のヨーロッパは、本当にジャズのレベルが高い。イタリアや北欧のジャズは日本でもよく知られているけど、ハンガリーはそれ以上じゃないだろうか?と今回感じた。西欧ではどうしても全体的にドラムのレベルが低いのが気になるんだけど(これはジャズに限らずクラシックやポップスでも)、ハンガリーはフォークロアなダンス音楽の伝統があるせいかドラムのレベルも高い。
しかしハンガリーで共演したサリク・ピーターの話によると、現在ダントツにすごいのはロシアのジャズだそうだ。言われてみると、以前Myspaceで聴いたロシアのジャズが素晴らしかったのを思い出した。確かにロシアこそものすごいレベルの高いクラシック教育があり、近年台頭してきた富裕層が娯楽を求めてニューカルチャーが沸騰しているというから、高度なジャズ音楽がどんどん出てくるのは当然かもしれない。本当に世界は広い。日本に閉じこもっていて、古い名盤だけを聴いていて「ジャズ」だなんて言ってられない時代がどんどん迫っている。


狭いステージにグランドピアノを2台置いて競演
ピーターを紹介してくれたのはハンガリー出身のイギリス人ベンスで、「マコトにそっくりのピアニストがいるんだよ、共演してみない?」という話を持ちかけられた。ブダペストのシーンを代表するピアニストだという。この”そっくり”というのはもちろん顔ではなく(笑)、ピアノのプレイがという意味らしいんだけど、加えて性格も似ているという含みがあるらしい。それならってことで快諾し、ブダペストのクリヤ・マコトとピアノのデュオをやることになった。

  簡単に言ったけど主催者は大変だった。会場となったブダペストを代表する二つのジャズクラブの一つ「TAKE 5」にはヤマハのグランドが入っているけれど、もちろん一台しかない。主催者がヤマハさんに協力を求め、こちらからも働きかけて同サイズのグランドを借りることができた。(ヤマハさん、いつもありがとうございます!)   ところで話が戻るけど、ブダペストのホテルにチェックインしている最中、ぼくは表から名前を呼ばれたような気がした。思い切り大声で「マコト!」って聞こえたんだよね。でも始めて来た町だし、まだ全然知り合いはいないし、話に聴いているスタッフとも面識がないし気のせいか????と思いつつ食事に出かけ、ホテルへ戻ったらピーターからメッセージが入っていた。明後日共演するクラブに今日も出てるから遊びにおいで、ということで、そのクラブはホテルのすぐ裏手だったので早速行ってみた。
行ったらお店のスタッフが歓迎してくれ、ピーターはめちゃイイヤツだった。確かに、ベンスの言うとおりぼくら気が合うかも?そこでさっきぼくの名を叫んだのは彼だったことが判明。ホテルの目の前で渋滞している最中に日本人を見つけたのでぼくだと思い、窓を開けて思わず叫んだけどすぐに車が動き出しちゃったので電話でメッセージをくれたのだとか。ああ、空耳じゃなかった・・・。その日出ていたユニットはレギュラーで活動しているボーカル入りのハンガリアン・ジャズ・バンドだったんだけど、本当にレベルが高くて素晴らしかった。

店内バーの前にはウィントン?と思われる壁画が
  そんな良い出会いのあとでぼくは二日間のマスタークラスをこなし、そしていよいよ本番の日を迎えた。「サリク・ピーター×クリヤ・マコト ピアノデュオ」である。(続く・・・)  奇跡の本番の話は次回ということで、今月のライブスケジュール。6月はリーダー・ライブをお休みさせてもらうけれど、7月末にはエジプトで熱狂的な歓迎を受けた「TOKYO FREEDOM SOUL」の国内初ツアーを行います。みんな、是非是非遊びに来てね!ついでにもう一つご報告を。現在放送中のみずほ証券CMを、以前ぼくの動画ゲストに出演してもらったジャズシンガーのmegが歌っているんだけど、このアレンジ&演奏をぼくが担当しました。トリオはTOKYO FREEDOM SOUL、ストリングスは弦一徹。
こちらのサイトでも聴けるので是非チェックしてね! http://www.mizuho-sc.com/company/cm_gallery/index.html

<クリヤ・マコト:6月のライブスケジュール>
●RIKU Special Live 2010 Vol.2
6/5(土) 清水マーカムホール(054-366-2478)
6/6(日) 浜松ハァーミットドルフィン(053-451-1807)
●太田剣バースデー・セッション
6/16(水) 六本木ALFIE(03-3479-2037)
●西藤ヒロノブ「Reflection」発売記念ライブ
6/29(火) 目黒ブルースアレイジャパン(03-5740-6041)
●TOKYO FREEDOM SOUL〜国内初ツアー!
7/02(金) 京都MOJO WEST(075-706-8869)
7/03(土) 名古屋STAR EYES(052-763-2636)
7/19(祝) 水戸GIRL TALK(029-225-0050)
8/02(月) 青山BODY&SOUL(03-5466-3348)
出演:クリヤ・マコト(pf)、鳥越啓介(b)、天倉正敬(ds)

※詳しくは、クリヤ・マコト・オフィシャルサイトをご覧ください。
http://members.jcom.home.ne.jp/tothemax/live/schedule.html

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