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ハイブリッドジャズの歴史 -クリヤ・マコト-


第20回:エジプト〜ヨーロッパツアーご報告

3/13〜4/4にかけて海外ツアーに行ってきたよ!今回は簡単にその報告を書きたいと思う。行程はエジプトのカイロ→ハンガリーのブダペスト→ベルギーのブリュッセル→フランスのパリ→イギリスのウェールズ→イギリスのロンドン→ドイツのケルンで、7都市8ライブ、3マスタークラスをこなしてきました!中でもインパクトが強かったのは、やはり今回初めて行ったカイロとブダペスト。
カイロへは、昨年から東京で積極的にライブを展開してきたぼくの一番新しいユニット、「TOKYO FREEDOM SOUL」で行って「カイロ・ジャズフェスティバル」に出演。これがめちゃめちゃに盛り上がって、1曲目から熱烈な声援を受けて大騒ぎになった。5曲演奏して、1曲毎にどんどん盛り上がっていきまさに会場は熱狂的な状態だった。


TOKYO FREEDOM SOUL@カイロ・ジャズフェスティバル
  ここ3年くらいぼくの主要なレパートリーになっている「さくらガーデン」という和風の曲も大反響で、後で聞いた所では涙を流していた女性もいたとのこと。いやマジで、カイロのオーディエンスは本当に若くて、熱くて、楽しみ方をよく知っていて、反応がものすごくストレートだった。
実は今回、友人のゴスペル・シンガー「ブレンダ・ヴォーン」が観光目的で同行していた。彼女はアメリカ出身の黒人女性で、普段はJ-POPスターのサイドヴォーカルを務めたり、ソロ歌手としてテレビに出たりしている。もう長年日本とアメリカを行ったり来たりしていて、trf、平井堅、宇多田ヒカル、ゴスペラーズなど名だたる大物アーティストのツアーを担当。アメリカではKC&サンシャインバンドやジャム&ルイス、ベビーフェイスといった大物黒人アーティストのショーに参加している。

ぼくとは10年来の付き合いで、コンサートやレコーディングでコーラスをやってもらったり、東京ジャズにも一緒に出演してもらったり、いろいろと世話になっている。そのブレンダが、一度エジプトに行ってみたかったと言って今回一緒についてきたんだよね。「せっかく来てるんだから1曲くらい歌ってよ」、と申し出たら快諾してくれたので、熱狂的な拍手に応えてアンコールがてらファンクナンバーの「Respect」を歌ってもらった。ベテラン・ゴスペルシンガーは、ステージに上がるなり興奮状態のオーディエンスを煽る!「Are you happy?」、「Yeah!!」という状態になってすぐにスタンディングオベーション、そして満場のオーディエンスが踊りまくる展開になった。いや〜、ホントに楽しかった!


クリヤ・マコト(pf)、ブレンダ・ヴォーン(vo)
実は、ぼくが自分のユニットで海外遠征したのは今回が二度目となる。前回は台湾の「台中ジャズフェスティバル」で、ラテンジャズ・ユニット「RHYTHMATRIX」で出演した。実はこの時にもオーディエンスが大騒ぎになって、まさに熱狂的な反響を得たんだよね。カイロでも同じ反応を得て、レギュラー・ユニットだと”持って行ける”という予感が確信に変わった。もちろん息のあったメンバーだから、フェスティバルのようにリハーサルの時間が短くてもサウンド環境があやしくても、多少の困難は乗り越えてノリノリの演奏ができる。だけどそれだけじゃなく、全員日本人だということでよりエスニシティー(民族性)の強いパフォーマンスになるんだと思う。
  ぼくはアメリカに住んでいた頃、ほとんど自分が日本人であるということを忘れて、アメリカ人の中に溶け込んでアメリカ音楽をプレイしていた。あの国は多国籍国家だから、ジャズの現場では人種や国籍に関係なく受け入れてもらえるんだ。それで日本へ帰国した当初は「本場アメリカに遜色のないサウンド」とか、「日本人離れしたセンス」とか、そんな風に論評されるのを素直に誉め言葉として受け取っていた。そして当時は自分が日本人であることの意味なんか、それほど重要に考えていなかったんだよね。
それが一変したのは日本に拠点を移して、そこからアメリカ以外の世界へ出て行くようになってからだ。アメリカ人のミュージシャンなら、アメリカで誰でもやっているような普通のジャズや、バークリー風のコンテンポラリー・ジャズ、ニューヨーク・アヴァンギャルド、西海岸風のイージージャズなんかをやっても十分に受け入れてもらえる。なぜなら、彼らはそういう音楽のオリジネーターと見なしてもらえるからだ。でも、日本人がそういう音楽をやってもほとんど注目してもらえない。なぜならそれはぼくらのエスニシティーじゃないし、ただの上手いプレイヤーだったらどの国だっていくらでもいるからだ。
日本人がアメリカでもヨーロッパでもない第三国へ行って、アメリカ・ルーツの音楽である「ジャズ」をプレイする場合、求められるのは日本人ならではの個性なんだよね。実際に各地をツアーしていると、この点を直に肌にヒシヒシと感じるんだ。だからいきなり「自分が日本人であること」の意味を猛烈に考え始める・・・。
いつも書いていることだけど、ジャズは元々人種の交わりによって生まれたハイブリッド音楽で、今でも新しい音楽を生み出す原動力はこの「ハイブリッド」することだ。そしてハイブリッドするためにはそもそも、自分自身が強烈なエスニシティーを持っていることが最も重要だ。アメリカ黒人やラテン人、ジャマイカ人やキューバ人がどれほど強烈なエスニシティーを持っているか容易に想像できるでしょ?つまりぼくらの場合は、自分が日本人であることこそが大事であり、財産なんだよね。

鳥越啓介(b)、天倉正敬(ds)
  さて、カイロ・ジャズフェスティバルの翌日は、地元の音楽学校でマスタークラス・セミナーをやった。さらにその会場で、地元の有力紙「アハラム・ウィークリー」のインタビューを受けた。インタビューしてくれた記者が書いてくれた記事がこちらだ。文化欄一面に丸々掲載されていたのでビックリした!タイトルは「Sakura Sounds」。ね、このタイトルもぼくが書いた事実をまさに証明してるでしょ?
■記事はこちら→http://members.jcom.home.ne.jp/0137495501/al-ahram.pdf

と言っている内に、今回はカイロの話で全部終わっちゃったので、次回続きを書きたいと思う。4月末からRHYTHMATRIXのツアーが始まっていて5/2まであります。それから7月には、待望の「TOKYO FREEDOM SOUL」初ツアーが出来ないか?と現在探ってるところ。何しろ帰国からこっちめちゃ忙しくて、今頃ブッキングしているのでうまくツアーが組めるかどうかまだ分からないけど頑張ります!その名の通り東京中心で活動しているユニットだけど、「東京以外でもやってください〜」というリクエストに応える前に、地方を飛び越してエジプトへ行っちゃったからね(笑)。

<クリヤ・マコト:5月のライブスケジュール>
●5/01(土) 芦屋レフトアローン(0797-22-0171)
RHYTHMATRIX:クリヤ・マコト(pf)、コモブチキイチロウ(b)、安井源之新(perc)、村上広樹(ds)
●5/02(日) 二川アヴァンティ・スクエア =Sold Out!!
RHYTHMATRIX:クリヤ・マコト(pf)、コモブチキイチロウ(b)、安井源之新(perc)、村上広樹(ds)
●5/4(火)?水戸GIRL TALK(029-225-0050)
牧山純子グループ:牧山純子(vl)、クリヤ・マコト(pf)、納浩一(b)、大槻"kalta"英宣(ds)
●5/5(水)?横浜KAMOME(045-662-5357)
北原雅彦セッション:北原雅彦(Tb)、宮本大路(Sax)、クリヤ・マコト(P)、TOKIE(B)、中村亮(Ds)
●5/25(火)?浜松・田町サロン(053-455-0808)
クリヤ・マコト(pf)×鳥越啓介(b)・DUO
※詳しくは、クリヤ・マコト・オフィシャルサイトをご覧ください。
http://members.jcom.home.ne.jp/tothemax/live/schedule.html

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